遠い昔のバレンタインデー

今週のお題「バレンタインデー」

バレンタインデーになると、今では妻と娘と孫から半分は義理チョコをもらうだけ。心ときめかすというようなことはない。「多分もらえるだろうという」という期待はある。もしもらえなければ、かなり落胆するだろうが、これまでそんなことはなかった。

半世紀も前になる。「バレンタインデー」がまだあまり知られていなかったのではないだろうか、高校2年生の時である。学校の廊下で、風呂敷包みを「これ」と言って渡された。それだけの会話だが、もしかしたらバレンタインチョコ?という期待はあった。「なんやねん」と素気ない返事で受け取ると、彼女洋子ちゃんは何も言わずに恥ずかしそうな素振りでそのまま行ってしまった。辺りには人はいなかったと思う。隠すようにその包みを教室に持ち帰って急いでカバンの中に入れた。部活が終わっていつもは一緒に帰る友達に、「本屋に寄るから」と言い訳して一人で校門を出た。家までは待てず、田舎道の人通りがないのを確かめて、風呂敷を開いてみると、中には森永のハイクラウンチョコレートが5箱入っていた。あのときの気持ちを「甘酸っぱい」と言うのだろう。うれしかった。その子に私も大きな好意を寄せていたのだから。

今でもハイクラウンチョコレートはあるのだろうか。それにしても風呂敷に包んでというがなんとも時代であるし、田舎風だと思う。しかし甘酸っぱい思い出である。彼女は今どうしているのだろうか。初恋は成就しなかった。バレンタインデーが近づく度に思い出す。